「大丈夫。詩乃が握ったんだろ?」

「はあ……まあ」

「それに、売店がダメなら、俺、家に帰るまでなんも食えないんだけど。あーしょうがないなー、せっかく来たけど、帰るしかないかー」


 って、めちゃくちゃセリフが棒読みなんですが。

 もう……本当に、こんなものでいいの?


「はい。……どうぞ」

 渋々片方のおにぎりを南条くんに差し出すと、南条くんがさっと受け取る。

「あー腹減った」

 ラップを剥がして、さっそくかぶりつこうとする南条くん。

「ま、待って! 毒味してからじゃないと——」

 慌てるわたしの目の前に、南条くんがおにぎりをぐいっと近づけてくる。

「はい、あーん」

「へ⁉ ……じゃなくて!」

 おにぎりを南条くんからさっと奪って半分に割ると、ぱくぱくとお腹の中に収める。

「はぁ~、おいしかったぁ」

 やっとちょっとだけ空腹が満たされて、幸せな気分。

「……で、そろそろ俺も食べていいの?」

 ハッと気づくと、南条くんにジト目を向けられていた。


 わわっ。完全に南条くんのこと、忘れてたよ。


「あ、ご、ごめんね。毒は入ってないみたい。大丈夫だよ」

「ん。じゃあ、いただきます。……すっぱ! でも、うまいな、この梅干し」

「でしょ? それ、うちのお母さんが漬けたんだよ」


 ふふっ。自分がホメられたわけじゃないのに、なんだかうれしい。