「『だからって、他人の命を奪おうとするのは間違ってる』って考えてるの、丸わかり」

 くすりと笑ったあと、南条くんの瞳にふっと影が差す。

「そんな理屈が通じるようなヤツらなら、俺だってこんな思いしてない。けど……俺を利用しようとするヤツらよりはマシかもな」

 そう言うと、南条くんは自嘲気味に笑った。

「そうだ。まだ言ってなかったよな」

 首をかしげるわたしの瞳を、南条くんがじっと見つめてくる。

「俺、こんな能力持ちだけど、自分のことは治せないんだ。だから……俺のこと、二度も体張って救ってくれて、本当にありがとう」

 南条くんが、わたしに向かって深々と頭を下げる。

「え、い、いや、これがわたしの任務だし? べ、別に特別なことはしてないからね?」


 こんなふうに面と向かってお礼を言われたのははじめてだったから、なんだかくすぐったい。

 けど、ああ、今までの苦しい修行は、全部このときのためだったんだって思ったら。

 うん。今までがんばってきてよかったって思えたよ。


「これからも、しっかりとお守りしますね、ご主人様」

 わたしがせいいっぱいの笑顔を浮かべると、南条くんはわたしの前に片膝をつき、右手を取った。

「…………」

 南条くんが、無言で熱っぽい視線を向けてくる。


 な、なに?

 言いたいことがあるなら、せめて言葉にしてほしいんですけど。


 なぜか心臓がバクバクしてきて、南条くんの視線にからめ取られたみたいに目がそらせない。

 そのままじっとお互い見つめ合っていると——。