「あんときも、正直かなりヤバかったんだぞ。俺のことかばって、あんな無茶しやがって」

「でも、それがわたしの任務だから。南条くんが無事でよかったよ」

 わたしが無理やり笑ってみせると、南条くんが苦しげに顔をゆがませる。

「任務だからって……ケガは治せても、命なくしたら俺にだって取り返せないんだよ!」

 突然の南条くんの怒鳴り声に、びくっと小さく肩が跳ねる。

「ごめん……なさい」

 わたしは、顔をうつむかせると、ぎゅっとこぶしを握り締めた。


 そう……だよね。

 わたしが命を失えば、いくら任務中だったとしても、きっと南条くんは責任を感じてしまうに違いない。

 南条くんに、わたしなんかのために苦しい思いをさせちゃダメだ。


「とにかく。詩乃は、俺から離れるな。これは命令だ」

 南条くんが、厳しい表情で言う。

「う……うん、わかった」


『俺から離れるな』だなんて、まるでわたしを守るかのような言い方。


 ……いやいや、考えすぎだって。

 ただ単に、言葉どおり『俺のそばでしっかり護衛しろ』って意味以外にあるわけがないよ。

 そうだよね。入学からまだ一週間も経っていないのに、二度も命を狙われたんだもん。

 本当なら、怖くて学校に行けなくなってもおかしくないくらいだよ。