全然理解できないんですけど。

 おでこっつんすると、解毒作用がある……ってこと?


 わたしが頭にクエスチョンマークを浮かべていると、南条くんが少しだけ表情をこわばらせ、もう一度口を開いた。


「俺には、治癒能力がある。そのせいで、命を狙われているんだ」

「治癒能力……? って、ほらあのファンタジーなんかでよくある、魔法でケガを治したりするやつ……ってこと?」


 真剣に話している人のことを、笑っちゃいけない。

 笑っちゃいけないってわかってるけど……。


「ぷっ……くくくっ……」

「おいそこ、笑うな」

 苦々しい顔で、キレイに整えられた髪をわしゃわしゃとかき混ぜる南条くん。

「だいたいなあ、この前のあの大事故でかすり傷ひとつないなんて、おかしいと思わなかったのか?」

「!」


 そうだ。

 もし今の治癒能力の話が本当なら、『さっき校門のとこで、クール王子が知らない女子とキスしてた』っていうのが、実は『おでこっつん』だったわけで。

 あのときケガを負ったわたしの命を救うためにしたことだったとしたら、全部つじつまが合ってしまう。