え、今の笑うとこ⁉


「な、南条くんにとっては日常茶飯事のことかもしれないけど、わ、わ、わたし、はじめてだったんだからね⁉」


 いや、違う。

 入学式の日にもされてる(らしい)から、正確にははじめてじゃないのかもだけど!


「接吻て。いったいいつの時代の人間だよ。っつーか、さすがにそんなことしてねえし」

 そう言うと、南条くんの顔がぐんぐん近づいてくる。


 この人、凝りもせず……!


 ぎゅっと目をつぶってわたしが顔をそむけると、おでこにぴとっと指先で触れる感触。


「でこと口を勘違いするって、どんだけだよ」

「なっ……!」

 かぁっと顔に熱が集まってくる。

「お、おでこでも! 勝手に触らないでくださいっ!」

 おでこを両手で覆って、必死に抗議の声をあげる。


 今は指だったけど、さっきぼんやりと見えた顔の近さからすると、あ、あれですよね?

 いわゆる『おでこっつん』。

 ほら、少女マンガなんかで、『おまえ、熱でもあるんじゃねーの?』とか言って、ラブラブな二人がよくやるやつ!


「だから悪かったって。でも、さっきも言っただろ。詩乃を助けるために、必要な処置だったって」


 必要な処置……って?


「でも。ふうん。そっか。したことないんだ」

 ぼそりとつぶやきながら、南条くんがなぜかちょっとだけうれしそうな表情を浮かべる。

「ねえ。わたしを助けるためって、いったいどういうこと?」