「本っ当に申し訳ありませんでした!」

 ほっぺたに保冷剤を当て、園内にある救護所のベッドに腰かける南条くん……の足元にきちんと正座するわたし。


 今、この部屋にいるのは、わたしたちだけ。

 植物園の方で急患が出たらしく、さっきまでわたしたちを診てくれていた看護師さんは、そっちの応援のために慌ただしく出ていってしまった。


 ちなみにさっきの件は、事件になるといろいろと厄介だから、「アメリカンドッグを喉に詰まらせた」っていうことにしてある。


 それにしても、修行の一環で多少毒に慣らされた体とはいえ、さっきは死を覚悟したっていうのに、こうやってなんの症状もなく無事でいられることが信じられない。

 奇跡が起こったとしか思えないよ。


「いや、俺が迂闊だった。みんな普通に食ってたし、まさか本当に毒が盛られているとは思わなかったんだ。ごめん」

「いえ、それはわたしも同じ認識でおりましたし。第一、毒味もわたしの任務の一環ですので、その点はお気になさらないでください」


 っていうか、南条くんが謝るべきはそこじゃなくない? って話で。

 だって、どさくさに紛れてわたしに、あ、あ、あ、あんなことしたんだよ⁉


「あー……一応言っとくけど、さっきのは詩乃を助けるためにやったことだから」

 南条くんが、目を泳がせながら頭をかく。

「さ、さっきのというのは……あの…………せ、接吻……のことでしょうか?」

 消え入りそうな声で言うわたしのことを、しばらくの間ぽかんとした顔で見つめていた南条くんがぷっと吹き出した。