「あーお腹すいちゃったぁ。なに食べよう。やっぱアメリカンドッグかなぁ。あの周りのふわふわしたところが甘くて好きなんだよね」

 売店の前に辿り着くと、さっそくメニューとにらめっこ。

「なんだよ。ほんとに腹減ってんの?」

 南条くんが、呆れた顔をする。

「そう、だけど?」


 え、ひょっとして、ダメだった?


「あの二人のための演技だと思ったから、乗ってやっただけだったんだけど」

「やっぱり愛莉さんの気持ち、南条くんも気づいてたんだ」

「あー……愛莉っていうより、俺は大和の方だけどな。俺のことなんか気にせず、さっさとくっつきゃいいのにって、ずっと思ってたからさ」

「それじゃあ、ひょっとしてわたしと付き合ってるってウソついた理由って……」

「まあ……半分は、それってことにしといて」

 そう言いながら、売店の前に並んだパラソル付きのテーブル席のひとつにどさりと腰を下ろす。


 幼なじみ二人が好き同士だなんて、きっと複雑なはずなのに。

 前に愛莉さんが『一見冷たい人に見えるけど、誰よりもやさしい人』だって言ってたけど、本当にそのとおりなのかも。


 わたしがじっと南条くんを見つめていたら、「なんだよ」と言って、ふいっと顔をそむけられてしまった。


「南条くんも、なにか食べる?」

「ああ。詩乃と同じでいい」

「うん、わかった」
「待って。俺が買いに行く」

 同時に言葉を発し、お互い顔を見合わせ、ふふっと笑う。


 息ピッタリで、まるでホンモノのカレカノみたい……って、なに考えてんだろ、わたし。