「おー、遅いぞ、二人とも」

「ごめんねー、道がちょっと混んでて」

「ウソつくなっつーの。愛莉が準備に時間かけすぎただけだろ」

 北澤くんが、すかさず愛莉さんにツッコむ。

「だって、みんなでお出かけするなんて、はじめてのことなんだもん。気合い入るのは当然でしょ?」

 そう言ってぷくっとほっぺたを膨らます愛莉さんは、なんだかいつも以上にかわいく見える。


 ほんのりピンクに染まった頬に、つやつやのくちびる、背中まで伸びたゆるくウエーブのかかった髪は、編み込みを入れて高い位置でひとつに束ねている。

 白のロゴTにピンクの長袖パーカー、デニムのショートパンツからはキレイな足がすらりと伸びていて。

 動物園デートにピッタリなアクティブ系コーデなのに、愛莉さんが着るとなんだかキラキラ輝いて見えるよ。


 対するわたしは、カーキ色のキュロットスカートに、黒の長袖カットソー。

 この地味目なカラーは仕事上仕方ないとはいえ、オシャレセンスのなさが情けなくなってくる。


「あれっ。そういえば、蒼真んとこの強面なおじさんは?」

 愛莉さんが、キョロキョロとあたりを見回している。


 強面なおじさん——南条くんのボディガードのことだよね?


「ああ。今日は動物園の中だけだし、人も多いし、俺らだけで行ってきていいってさ」

 そう言いながら、南条くんがすっと視線をそらす。


 ウソつくのがヘタすぎるよ、南条くん。


 バレやしないかとヒヤヒヤするわたしをよそに、「そっか。それもそうだよねー」なんて愛莉さんは納得した様子。


 ホッ。とりあえず南条くんのウソを信じてくれたみたいで、よかった。

 まあ、まさかわたしが南条くんの護衛だなんて、誰も思わないだろうけどね。