一生実る可能性のない初恋……?


 そっか。南条くんには、本当に大切に想っている人がいるんだ。

 だからホンモノの彼女を作らず、わたしのことをニセカノにしたのかもしれない。

 護衛に都合がいいからだけじゃなく、周りの人たちをこうやって安心させるためでもあったのかも。


「だからね、蒼真が望月さんに興味を持ってくれたことが、すっごくうれしいの」

「…………」

 星山さんの笑顔が、心にグサリと突き刺さる。


 ごめんなさい、星山さん。

 ウソをついていることが心苦しくて、星山さんの笑顔がまともに見れないよ。


 顔をうつむかせると、膝の上に置いた両手をぎゅっと握り締める。


「……あのっ、星山さん」

「なあに、望月さん。あ、クラスメイトなんだし、詩乃ちゃんって呼んでもいい? もしよかったら、わたしのことも愛莉って呼んでね。そうだ、蒼真とはどこで知り合ったの?」

 星山さん——愛莉さんに目を輝かされるたびに、ウソをついていることへの罪悪感が重くなっていく。

「違うんです。実は……」


 だけど……言っちゃダメだ。これは、任務のうちなんだから。


「その……人に、紹介してもらって」

「じゃあ、お見合いってこと? 結婚を見据えてのお付き合いってことね⁉」

「へ⁉ い、いえ、そういうわけでは」


 なんだか話が大きくなってない⁉


 慌てて両手と首を左右にぶんぶん振って否定するわたしに、『わかってるわよ』という顔でうなずく愛莉さん。