依頼人は、同い年の南条(なんじょう)蒼真(そうま)

 日本を代表する大企業のひとつ、南条ホールディングスの長男だそうだ。

 幼い頃から誘拐されそうになったり、命を狙われたりを繰り返していて、初等部の頃はほとんど学校にも通えてなかったみたい。


 今回の任務のため、依頼人の顔から交友関係まで、しっかりインプット済み。

 彼の第一印象は、簡単に言うとクール系イケメン。

 写真なのにキラキラオーラがまぶしすぎて、こんな男子が同じクラスにいたら、きっと女子にキャーキャー騒がれまくるんだろうなー、なんて思わず想像しちゃったくらい。


 だけど、それはあくまでもその様子を傍観する立場として、の話。

 厳しい掟の存在のおかげで、わたし自身はなんの感情を抱くこともなく冷静に見ることができた。


 我が望月家には、依頼人との信頼関係を重んじるため、依頼人との恋愛を固く禁じる厳しい掟があるの。

 もしもこの掟を破ったら、その仕事を即降りなくちゃいけなくなるだけじゃなく、破門されてしまうんだ。

 そうしたら、二度と護衛の仕事に就くことすらできなくなってしまう。


 まあ、禁じられていなかったとしても、こんなイケメンとわたしとの間に恋が生まれるなんてこと、万が一にもありえないけどね。

 長所は、人並外れた運動神経! 見た目は中の中、色気に関しては皆無のわたしでは、女子として認識してもらえるかどうかすら怪しいよ。