「えーっと……なにを、ですか?」

 必死にわからないフリをして、ぎこちない笑みを返す。


 本当はわかってます。

『どうやってあたしから蒼真を奪ったの?』とか、そんな感じのお話ですよね?


「ごめんなさい! 実は——」
「ねえ、蒼真とはどこで知り合ったの? あの不愛想なヤツのどこを好きになったの? まさか蒼真の恋バナが聞ける日が来るなんて、夢みたいだわあ」

 両手を組み合わせ、目を輝かせた星山さんが一気にまくし立てる。

「あ、ごめんなさい。こんなに一気に答えられないわよね。でもほんと、あたしたち——あたしたちっていうのは、あたしと大和なんだけど——ずっと心配してたのよ。蒼真ってば、幼稚舎から一緒のあたしたち以外に、新しい友だちすら全然作ろうとしないんだもん。他人に無関心っていうか、自分とは関わるなって、バリア張ってるみたいっていうか」


 そうだったんだ。

 それってやっぱり、南条くんが命を狙われていることと無関係とは思えないよ。

 自分と関わることで、他人を危険に巻き込んでしまわないようにって思っているんじゃないのかなぁ。


「それにね、どこの誰かもわからない、一生実る可能性のない初恋を、ずーっと引きずってるみたいだったから。ようやく新しい恋に踏み出せたって聞いて、どれだけ安心したことか」