「わ、わたしも、そろそろ帰りますね」

 なんとかそう返して、ぎこちない笑みを浮かべる。

 あんまり長くしゃべっていると、なにかボロが出てしまいそうだ。

「気をつけて帰るんだよ」

「はい、ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げ、校門を出ようとしたそのとき——。


「待って、望月さん!」


 わたしの名前を呼ぶ声に振り向くと、星山さんが小走りでやってくるのが見えた。


「はぁ、はぁ、はぁ…………ねえ、望月さん。今日時間ある? ちょっと付き合ってほしいんだけど」

 わたしのところまでたどり着くと、息を整えてから星山さんがキラキラした瞳をわたしに向ける。


 緊張で、ごくりとのどが鳴る。

 今度こそ、『アレ』に違いない。

 わかってはいるけど、今その場しのぎで逃げたって、結局星山さんとは毎日顔を合わせなくちゃいけないんだ。


「わかりました」


 これも任務のため。

 自分にそう言い聞かせ、わたしはこくりとうなずいた。