……とは言ったものの。

 一学年十人くらいしかいない田舎の小さな小学校出身で、放課後は毎日山の中で修行をしていたようなわたしにとって、この都会のセレブな学園はキラキラまぶしすぎる。

 ここに通う子たちは、みんなしゅっとしたキレイな子たちばかりで、丁寧に整えられたロングヘアに、爪なんかもキレイに伸ばしてよく手入れされていて。


 一方わたしはといえば、動きやすさ重視のショートボブヘアに、きっちり切り揃えられた爪。

 同じ制服を着ているはずなのに、みんなとは明らかに体からにじみ出ているオーラが違う。


 わたし、完全に浮いてるよね⁉

 やっぱり南条くんの彼女役だなんて、ムリがありすぎるってば!


 南条くんの隣にぴたりと貼りつくようにして、教室に向かって廊下を歩いていると、案の定ウワサ話があちこちから聞こえてくる。


「ねえ、本当にあの子がクール王子の彼女なの?」

「いまだに信じられないんだけど」


 ほらほらほらほらぁ。さっそくウソだってバレそうだよ。


「わたし、絶対愛莉と付き合ってるんだと思ってた」

「わたしも! それが、まさか……ねえ」


 愛莉さんって……幼なじみの星山愛莉さんのことだよね?

 そういえば星山さん、さっき、わたしと南条くんが付き合うことになったって聞いて、すごくビックリしてたっけ。

 北澤くんも、『モテキャラなクセに、愛莉以外の女子には塩』だなんて言ってたし。

 南条くんにとって、星山さんって……ひょっとして、トクベツな人なんじゃないの?