今までずっと、お兄ちゃんに一人前だって認めてほしくてがんばってきた。

 そのためならいくらでもがんばれたし、誰にも恋なんかしないって思ってきた。


 なのに、どうしてこんなふざけたことに付き合わなくちゃいけないの?

 依頼人だからって、なにをしても許されるわけじゃないのに。


「……わかりました。南条くんのご指示であれば、従います」

 ぎゅっと両方の拳を握り締めると、わたしは顔をうつむかせて絞り出すようにして言った。


 まったく納得してはいないけど、依頼人の指示は絶対だ。

 それに、今朝のあの出来事を見ただけでも明らかだ。

 南条くんが、本当に命を狙われているんだってこと。

 常に一緒にいても怪しまれない彼女役は、護衛にはもってこいのポジションには違いない。


 誰に恨まれようが、どんな嫌がらせをされようが、依頼人の命よりも大事なものなんてない。

 こんな女子力ゼロなわたしが学園の王子様の彼女だなんて、ぜーったいにみんな納得しないだろうけど。

 望月詩乃、任務のため、この設定をきっちりやり遂げてみせます!