どう考えたって、第一印象サイアクすぎるだろ!

 もう一度やり直したくて、今日まで何度あのシーンを夢に見たことか。


 だいたいなあ。なんであのとき、アイツは無傷で詩乃のことを助けてくれなかったんだよ。

『想定外の動きをされて、対応しきれなかった』だと?

 ふざけんな。なんのための護衛だよ。


「それでね、さっきの話なんだけど……ごめんなさい! 実は、依頼人に恋をしてはいけないっていう掟があるの。だから、もし約束を守れなかったとしても、南条くんのホンモノの彼女にはなれない」

「ふうん。それって、掟があるから、なれないってこと?」

「ちがっ……そういう意味じゃなくて……」


 慌てる詩乃もかわいい。

 そういう真面目なとこも好き。


「冗談」

「へ?」

「冗談に決まってるだろ。そうやって、ジタバタする詩乃が見たかっただけ」

「そ……そうだよね! ビックリしたぁ。だって、これはあくまでも南条くんを守りやすくするための、ウソの彼女役だもんね」

 詩乃が胸に手を当て、ふぅーっとなでおろしている。


 そんなにホッとされると、さすがに傷つくんだけど。


「そーだよ。勝手に本気にして、ヘンな勘違いすんなよな」

「……そうだよね。ごめんなさい」


 ま、そんな掟があることくらい、百も承知だ。

 むしろこの掟を逆手に取って、俺は詩乃を手に入れるつもりなんだから。


 とにかく俺は、絶対に詩乃を諦めるつもりはない。覚悟しとけよな。



(おわり)