ふぅー、と大きく息をはく。


 あんなふうに食いもん目の前にして目を輝かせてたら、ちょっとくらいからかってやりたくなるだろ。

 はあー……無自覚なあのかわいさ、どうにかなんねーのかよ。


 本当は『ホンモノの彼女になって』どころか『俺と一生一緒にいて』って言いたかった。

 さすがにそれは我慢したけど、十分アウトだよな、これ。


 下手に押して逃げられたら、今までの苦労がすべて水の泡なんだぞ?

 ちゃんと考えてから言えよ。ったく。


 何年もかかって、やっと見つけたんだ。

 絶対に手放したりしない。

 必ず俺のことを好きにさせて、こんな危険な仕事から、きっちり足を洗わせてやるからな。


「ご、ごめんなさい! 南条くんを一人にするなんて、護衛失格だよね」

 数分後、慌てて部屋に飛び込んできた詩乃が、そっこーで俺に土下座する。

「今頃気づいたのかよ」

 思わず苦笑いが漏れる。


 たまに抜けてるとこもかわいいんだけど、護衛としてはさすがにマズいだろ。


「ま、アイツがいたから、問題ないよ」


 詩乃は、アイツのことを、俺の護衛の相棒だと思い込んでるみたいなんだよな。


「そ、そっか。そうだよね。あー、よかったぁ」