いきなり真剣な声で名前を呼ばれ、全身に緊張が走る。


「今すぐじゃなくていい。だから……頭の片隅にでも、置いといてくれない? 俺のこと、好きになってって話」


 ——だから、南条くんを好きになるわけにはいかないんだってば。


 ……って言わなきゃいけないのに。


 こくり。


 小さくうなずくと、くるりと南条くんに背を向ける。

 顔が死ぬほどアツい。


「ほ、ほら。解決したって、早くみんなに知らせに行こっ」

 南条くんに背を向けたままそう言うと、わたしは講堂に向かって駆け出した。


 もしもこの気持ちがそういう感情に発展することがあったとしたら、どうしたらいいのか全然わからない。

 だけど、最初から否定はしたくない、なんて思っちゃった。


 それって、もう……。


 ううん、違う。今は、そんなんじゃない。

 だって、これからも南条くんの幸せは、わたしの手で守りたいって思ってるから。



(了)