詰め所の中には、南条くんと二人きり。


『何度も言ってるよね? 俺のこと、本当に好きになってって』


 さっき、そう言ったときの南条くんの真剣な表情を思わず思い出してしまい、なんだか心臓がドキドキしてきた。


「そ、そういえば南条くん、着替え終わってたんだね。もう南条くんのお姫様姿は見られないのかー。それはそれで寂しいなぁ」


 ……いやいや、ないない。

 これは、わたしの夢のためには、持ってはいけない感情なんだから。


「あのクライマックスシーン、いつから考えてたんだよ」

 そう尋ねる南条くんの頬が、ほんのり赤いような気がする。


 それって、『アレ』のことですよね?


「いつからっていうか、咄嗟の思いつきで。だって南条くん、全然目覚めてくれないから。南条くんの治癒能力なら、お姫様の呪いも解けるんじゃないかなって思って」

 南条くんが、ぽりぽりと人差し指で頬をかいたあと、ちょっとだけ口角をあげる。

「あれ、実はすごくうれしかった。俺のこと、ちゃんと認めてくれてるような気がして」

「そっか。……喜んでもらえたのなら、やってよかった」

 わたしがえへへっと笑ってみせると、南条くんが左手で自分の顔面を覆う。

「あー……もう……」

「ど、どうしたの? どこか具合でも悪い⁇」

「大丈夫だよ。そういえば、着替え取ってくるって言ったきりで、あいつらきっと怒ってるだろうな」

「そうだった! でも、これで一応爆弾事件も解決したし。みんなにも、早く知らせてあげなくちゃだね。あ、念のために言っておくけど、解決したのは警察ってことで、よろしくね」

「はいはい、わかってるよ。——あのさ、詩乃」