「詩乃には、このまま俺の護衛として、ここにいてほしい」

「え……いいの?」

 ぱっと南条くんの顔を見上げる。

「わたしで、本当にいいの? だって、もしも南条くんが誘拐されたら、わたしはクビだって」


 それって、『そんな無能なヤツはクビだ』ってことでしょ?


「あれは、俺の救出のために、詩乃が危険な目に遭わないようにするためだったんだよ。せっかくクビにしたのに、結局一番危ないとこに首突っ込みやがって」

 南条くんが、わしゃわしゃと髪をかき混ぜる。

「だって、南条くんをどうしても助けたかったから……」

「それに、俺の知らないところで危険な目に遭うくらいなら、ここで俺の護衛でいてくれた方がずっといい。詩乃になにかあったら、俺が詩乃のことを全力で救ってやる」

 わたしの目をじっと見てそう言ってから、圭斗の方をチラッと見る。

「あ、それからおまえも引き続き頼むな」

「……わかりました。ご主人様」

 ぎりっと奥歯を噛みしめ、ニコリとする圭斗……の目が全然笑ってない。


 この二人、なんだかとっても相性が悪いみたいなんだけど。この先、大丈夫かなぁ。


「そ、そうだ、圭斗。さっき暗号がどうとかって言ってたけど、ねえ、それってどんな暗号なの?」

「教えない。佐治家のヒミツだから」

 せっかく空気を変えようと思って、違う話題を振ってみたのに、圭斗はぷいっと顔をそむけて詰め所を出ていってしまった。