そーっと薄く目を開けてみると、南条くんが、わたしの傷の上に手をかざしていた。


「このくらいの傷なら、これで治せるから。あ、ひょっとして、いつものヤツを期待してた?」

 南条くんが、くすりと楽しそうに笑う。

「し、してないから」


 それで治せるなら、いつもそうしてくれればよかったのに。


「生死に関わるような大ケガや、毒を口にしたときなんかは、あれじゃないと回復が追いつかないんだよ」

「そう……だったんだ。でも、本当はイヤ……だったよね。緊急事態とはいえ、わたしに、あんなことするの」


 それでも南条くんは、何度もわたしのことを助けてくれた。

 南条くんは、間違いなくわたしの命の恩人だよ。


「詩乃なら、全然イヤじゃない。何度も言ってるよね? 俺のこと、本当に好きになってって」

「いや、だからあれは冗談……」

「俺、冗談でそんなこと言ったりしない。なんのためにこんなに必死に詩乃のことを探し出したと思ってんだよ」

「探し出したって、わたし、前に南条くんに会ったことなんか……」


 あれっ。そういえばさっき、『きっとあの子もがんばってるから、俺もがんばろうって思えた』って。

 わたしも南条くんと同じことを思ってずっとがんばって……。


「ちょっと待って。え? あのときの、男の子……?」

 あの昔会ったメガネの男の子の面影と、南条くんが重なる。

「やっと思い出してくれた」

 南条くんが、やさしい笑みを浮かべる。

「あのときから、ずっと詩乃のことを探してた」


 じゃあ、ひょっとして、南条くんの初恋の人って……。