こんなの、南条くんを助けられなければ、なんにも意味がない。

 わたしの任務は、南条くんの命を守ること。ただそれだけだ。その他大勢の命を守ることじゃない。


 けど、自分の命と引き換えにたくさんの命が奪われることになったとしたら、南条くんはどう思うだろう。

 本当の意味で彼を守りきったと、胸を張って言える?


「うー、うー、うーっ!!」

 南条くんが、必死に首を横に振っている。


 言いたいことは、わかってるよ。

 けど、だからといって、南条くんが悪い人のところに連れていかれるのを、黙って見過ごすこともできないよ。


「わかりました」

 わたしが静かにそう言うと、南条くんが、「う、う、う、うーーっっ!!」と必死に抵抗する声をあげる。


「——あなたには、どちらも渡さない!!」


 爆弾を和田さんの頭上に放り投げると、

「な、なにやってんだ!」

 と、慌てた和田さんが、両手で爆弾をキャッチしようと手を伸ばす。


「スキあり!」


 滑り込みながら足払いすると、「うおっ!」と和田さんがバランスを崩す。


「圭斗、おねがい!」


「まったく、人遣い荒いんだから」

 という声とともに、暗がりから現れた圭斗が、爆弾を危なげなくキャッチ!


 その隙に、わたしは南条くんを抱えて、和田さんから距離を取った。