素早く壁のバインダーに手を伸ばすと、手裏剣の要領で和田さん目がけてしゅっと放つ。

「そんなことをしてもムダだとわからんのか!」

 和田さんがバインダーに気を取られた一瞬の隙をついて、わたしは和田さんの視界から身を隠した。

「くそっ、どこ行きやがった!」

 わたしを探してキョロキョロする和田さんの背後に回ると、うしろから爆弾を持った右手を捻りあげる。

「ぐわぁっ!」

 悲鳴をあげた和田さんが、爆弾を手放し、スローモーションのように爆弾が落下していく。


 やっば!


 滑り込むようにして両手でなんとかキャッチすると、そのまま和田さんとの距離を取る。

 とりあえずこれで、自暴自棄になっておかしなことをされるのだけは、阻止できた。


「そんなもん、あんたには不要だろ? ほら、こっちに返しな?」

 不気味な笑みを顔に貼りつかせた和田さんが、わたしに向かって手を差し出す。

「返してほしかったら、南条くんを返してっ」

「ほお、そうきたか」

 和田さんが、ニタリと笑う。

「でも、おじさんにそれを返しちまってもいいのかねえ。たくさんの人を殺してしまうかもしれないよ?」

「……」

「予定変更だ。あんたは、爆弾魔から爆弾を奪い、たくさんの人間の命を救う。そして、俺は獲物を依頼主に届けて任務完了。これでどうだ? どっちにとってもいい話じゃねえか」

「……」