ぎゅっと拳を握り締めると、もう一度部屋の中をくまなく見回す。

 部屋の真ん中には、真四角のテーブルが置かれていて、その周囲には折りたたみイスが四脚。

 奥の壁際に置かれた背の高い収納の足元に、テーブルが邪魔でよく見えないけれど、誰かがうずくまっているみたい。


「こんなことをして、ここから逃げられると思っているんですか?」

「おせっかいなあんたの口さえ封じればな。あんたの無能な仲間のおかげで、警察の目は今、完全に学園の外に向いてるしな」

 和田さんが、汚い笑みを浮かべる。

「……圭斗の悪口を言わないで。圭斗はわたしなんかよりも、ずーっと優秀なんだから!」

「あーっと、そうやって大声出すんじゃねーよ。こいつがどうなってもいいのか?」

 足元にうずくまっていた彼の腕を、和田さんがぐいっと引き上げる。

「……っ」

 手足を縛られ、猿ぐつわをかまされた彼の顔が、苦痛にゆがむ。

「南条くん!」


 やっぱり南条くんだったんだ。よかった。無事でいてくれて。

 だけど、爆弾を持った犯人に拘束されたまま。どうしたら……。


 チッ、チッ、チッ、チッ……と、掛け時計の秒針の音がやけにうるさく聞こえる。

 ごくりとつばを飲み、カラカラになったのどを湿らせる。


 ……一瞬で決める!