ひょっとして、さっき圭斗が『少し前に忍び家業から完全に足を洗った家』って言ってたのが、和田さんだったってこと?

 そういえば、入学式の朝のわたしを見て、『まるで忍者みたいな身のこなしだったよね』なんて言ってたっけ。

 最後は『さすがに令和の時代に忍者なんていないか』なんてごまかしていたけど、きっとあのときからわたしが望月家の忍びだって気づいていたんだ。


「じゃあ、さっきのあの爆竹も……」

「ああ。あれは、和田家の十八番でね。なかなかいい音だったろ? ただの爆竹の音だとは、誰も思わねえよなあ」

 和田さんが、誇らしげに言う。

「ああ、そうだ。俺が得意なのは、爆竹だけじゃないんだぜ。この爆弾は、小さいけど、ビルひとつ吹き飛ばすのに十分な威力があってなあ。きひひっ。俺、天才だろ? こんな世の中、いつかふっ飛ばしてやるって思って、ずっと機会をうかがってた。俺は、こんな小さな箱の中で一生を終えるような人間じゃねえんだよ!」

「だったら、もっと人の役に立つことをしてください。それが、わたしたちの使命ですよね?」

「は? ガキがなに生意気なこと、ほざいてんだよ!」

 叫びながら、がんっ! と傍らの机を蹴り飛ばす。

「忍びは、人を守るのが仕事なんです。なのに、忍びの力を使って悪いことをするなんて……絶対に許せない」