「静かにしてろって言ってんだろ。死にたいのか、てめえ」

 なんだか物騒な言葉と、「うーっ、うーっ」とうめくような声が聞こえる。

「あのー、すみませーん。和田さん、いらっしゃいますかー?」

 おそるおそる声をかけると、ハッと息を呑む気配がする。

「うっ、うっ、うーっ!!」

「チッ。だから黙ってろっつってんだろ」

「あの、今のって……」

「ああ、気にしないで。君はなにも聞いていない。そうだよね?」

 奥の方でしゃがみ込んでいた和田さんが、氷のような笑みを貼りつかせて立ち上がる。

 その和田さんの異様な雰囲気に、思わずじりっと一歩後ずさりする。

「だ、誰か苦しんでるみたいですけど、救急車とか——」
「大丈夫だよ。なんでもないって言ってるでしょ?」

「でも……」

「あーもう、面倒くせえな」

 苦々しい顔で髪をわしゃわしゃとかき混ぜると、壁際に置かれた収納の引き出しから、なにかを取り出した。

「俺が必要なのは、こいつだけなんだよ。他のガキは傷つけないで任務を完了するつもりだったが、予定変更だ。あんたら望月家のことは、ずーっと目障りだって思ってたんだよ。俺らみたいな小さな家は、潰れても当然だと思ってんだろ。なあ⁉」