「南条くん、きっともう外に連れ出されちゃったってことだよね? ねえ、どうしよう」

「友だちとして助けに行くって決めたんじゃなかったの? そうやってすぐに僕に頼ろうとするのはどうかと思うけど」

「う……それはそうだけど」

 言葉に詰まるわたしを見て、小さくため息をつくと、圭斗がポケットからスマホを取り出した。

「とりあえず警察に報告して、緊急配備をしてもらおう」

 そう言いながら、素早くスマホを操作する。

「ああ、父さん? 南条が連れ去られた。さっき学外に連れ出されたっていう目撃証言も取れてる。……うん、よろしく」

 しゃべりながら、圭斗が神経質にトントントントンと足を踏み鳴らしている。


 めちゃくちゃイライラしてるみたい。

 どれもこれも無能なわたしのせいだけど。


 スマホの通話を切ると、「すぐに手配してくれるって」と圭斗がわたしに向かって言う。

「よかったぁ。ねえ、それで犯人を捕まえられるってことだよね?」

「どうかな。五分五分ってとこ?」

「半分⁉」


 そんな……。半分の可能性で、警察に捕まらずに逃げちゃうってこと?


「そうだ! さっき見かけたっていう犯人の特徴を、和田さんに聞くの忘れてた」

 詰め所の扉をコンコンとノックしてみたけど、応答がない。

 よく聞き取れないけど、中で声がする。

 話に集中していて、気づかなかったのかも。

 ドアノブに手をかけ、引いてみる。

 カギはかかってなさそうだ。