「和田さーん!」

 校門の脇に立つ和田さんを見つけ、走りながら大きな声で呼びかける。


 よかった! 一番話しやすい警備員さんで。


「ああ、君か。大丈夫だったかい? なんか大変なことになっているみたいだけど」

「はい。今のところ、ケガ人も出ていないみたいです」

「そう。それはなによりだ」

「それで、あの、ここを不審な荷物を持って出ていった人を見かけたりしてませんか?」

「不審な荷物?」

 和田さんが、顎に手を当て、しばらくの間考え込む。

「そうだなあ……警察っぽい服装の人が、さっき大きな段ボール箱を乗せた台車を押して出ていったくらいかなあ」

 それを聞いて、わたしと圭斗は思わず顔を見合わせた。


 ほらね! やっぱりここを通って出ていったんだよ。


「そのドヤ顔ムカつく」

 圭斗がぼそりとつぶやき、チッと舌打ちする。

「ありがとうございます! 和田さん」


 そのとき、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン! というくぐもった音が詰め所の中から聞こえてきた。


「あの、どなたか呼んでいるみたいですよ?」

「ああ。無駄口叩いてないで、ちゃんと仕事しろってさ。うちの上司、結構口うるさくてね」

 和田さんが、小さく肩をすくめる。

「お仕事、大変ですね。いつもありがとうございます」

「いやいや。みんなの学校生活を守るためだからね。せいいっぱい務めさせてもらってるよ」


 ゴン、ゴン、ゴン、ゴン!!


 さらに激しい物音が聞こえてくる。


 わわっ。上司さん、めちゃくちゃ怒ってない⁉


「悪いね。ちょっと行ってくるよ」

 わたしに片手をあげると、和田さんは詰め所へと戻っていった。