「ほら、早く講堂に戻ろう。ここにいるのを誰かに見つかると、いろいろと面倒だ」

「でも、南条くんを助けに行かないと!」

「だから、詩乃は解任されたんだよ」

「そんな……」

「警察に届けて、あとは任せるんだ。いいね、これは命令だ」

 圭斗が厳しい声で言う。


 わたしが無理やり学校に来させなければ、こんなことにはならなかった。

 やっぱり余計なことをしちゃったってことだ。


 南条くん、今、どこにいるの?

 きっと怖い思いをしているに違いない。

 そう考えただけで、胸がぎゅっと苦しくなる。


 なのに、わたしはこのまま任務を離れなくちゃいけないの?


「……ムリ。そんなこと、できないよ」

「詩乃。これは命令だよ」

「だったら、南条くんの友だちとして、南条くんを助けにいく」

「友だちとしてって」

 圭斗が呆れたようにつぶやく。

「あてはあるの? なんの手がかりもないっていうのに、どうやって探すつもり?」

「それは……そうだ! 校門のところの警備員さんに、不審な荷物を持った人が出ていったりしてないか聞いてみる」

「あのねえ。そんなわかりやすい行動をする犯人がいるわけないでしょ」

「それでも、可能性はひとつひとつ潰していくしかないじゃない」

「……わかったよ。だったら、好きにすれば」