「詩乃。講堂で待機って言ったよね?」

 背後で声がして、ぱっと振り向くと、開けたままの窓枠のところに圭斗が立っていた。

「圭斗……」

 ダメだってわかっているのに、ぼろぼろっと涙がこぼれ落ちる。

「どうしたの? まさか……」

 ぱぱっとあたりを見回した圭斗の顔が険しくなる。

「彼から目を離したの?」

「ごめんなさい。なにかあったら大声で呼ぶからって言われて、一分もしないうちに戻ったはずなのに、いなくなってて……」

「物音は聞いてないの?」

「うん、聞いてない。けど、さっきまで開いてなかったはずのそこの窓が、戻ったときには開いてたの」

 圭斗が顎に手を当てて、しばらくの間考え込む。

「さっきの爆発音について、父さんに確認してきたんだけど、忍びの仕業の可能性が高いってさ。とある流派の忍びが得意としていた爆竹が使われたみたいなんだ。ここから南条を連れ出したのも、その忍びと見てまず間違いないだろうね」

「忍び……わたしたち以外にもいたんだ」

「いや、正確には、少し前に忍び家業から完全に足を洗った家らしいんだけどね」

「じゃあ、まだその人が実は家業を続けていたってこと?」

「そういうことになるね。とにかく、詩乃にケガがなくてよかったよ」

 圭斗が小さくため息をつく。