わたしの身長の三倍はありそうな高い高い塀。

 その塀の上には、刺さったら痛そう……じゃ済まない槍みたいなのがずらーっと並んでいて。

 これまた重厚な造りの校門は登下校時のみ開放され、その脇には警備員の詰め所まである。


 うーん。さすが由緒正しい家柄の子にのみ通学が許可されている学園なだけあって、警備体制は万全だ。

 っていうか、ここまで万全だったら、そもそもわたしがここにいる必要なくない?


 ここは私立大御門(おおみかど)学園中等部……の校門を入ってすぐのところに植えられている高い木の上。

 そんなところでなにをしているのかっていうと、依頼人の到着待ちだ。

 実は、今回がわたしの初任務なの!

 今まで散々修行はしてきたけど、現場に出るのははじめて。


 わたしの生まれた望月家は忍びの末裔で、今は要人警護……つまりボディガードを生業としている。

 数年前の要人暗殺事件以降、特にその需要は高まっていて、常に人が出払っている状態が続いているんだ。

 それで、今日から中学生になるわたし・望月(もちづき)詩乃(しの)にも、初任務が回ってきたってわけ。