「あはははっ、だって可笑しいんだもの」



山姥はオレを指差す。



「お前はこんな人間が良いの? こんな、どこにでもいそうな、ぼんやりした坊やが?」

「彼はどこにでもいそうな人じゃない」



そう反論した澪に山姥は苛立ったのか、
「私に反抗するんじゃないよ!!」
と、怒鳴った。



「こんな人間に全てを語るなんて!! お前のことを話すだけでも問題の種なのに、私のことまで話して危険に晒すなんて!! ……はぁ!? どうかしている!!」

「ごめんなさい、謝るから……!だからお母さん、彼は逃して!」

「澪……」



山姥は急に落ち着いた様子を見せて、静かに澪を呼び、
「ふふふ、可哀想な子、澪ったら」
と、再びニコニコと笑い出した。



「こんな坊やに心を奪われて。お母さんより、この坊やを選ぶの? ……違うよね? お母さんのほうが大事だよね?」



澪はその言葉に泣き出してしまう。



「泣いてちゃわからないよ、澪。お母さんが大事だよね!? お母さんのために、この坊やを差し出せるでしょう!?」