「……どこにもいかないで」
呟いた言葉が。
ピューッと吹いた秋風に乗って。
山に届くといいな。
どこにもいかないで。
まだオレと一緒にいようよ、澪。
……五年の月日が経った。
大学進学のために、村を離れていたオレが。
夏休みで、帰省した時。
山を見て。
なんだか妙に、澪のお墓に手を合わせたくなった。
伝えたいことがあるんだ。
出来たら、駒澤くんにだって聞いてもらいたい。
その思いから、オレは山に登った。
あの時は、あんなに道に迷って山小屋にはどうしても辿り着けなかったのに。
不思議とすんなり、山小屋に行くことが出来た。
「……まだ、あったんだ……」
山小屋を外から眺めて、思わず呟く。
中に入ろうかと少し迷って、やめた。
だって、やっぱりつらいから。
オレは裏に回って。
澪と澪の母親のお墓の前に立つ。