でも。

ぽつんと、二つのお墓があるだけで。



胸の奥が締めつけられる。

切なくて。

息苦しかった。






山を下りて、村に帰って来た。

ひとりで帰れると言ったけれど、疋田さんが家まで送ってくれることになった。



「車で送るよ。捜索隊で使っている車が、すぐそこにあるから」



その車に乗って。

疋田さんがシートベルトを締めている隣で。



「あの」
と、オレは話しかけた。



「何? どうした?」

「あの、疋田さんって、中学一年生の妹さんがいませんか?」

「えっ、何? 高浜くん、オレの妹を知ってんの?」



(やっぱり)




「バスで前に話したことがあって」

「へぇ!」

「ひーちゃん、むっちゃんって呼び合っているのを聞いていただけで、名前は知らないんですけど」

「あぁ、むっちゃん! あの子ね!」



疋田さんもむっちゃんを知っているらしい。



「あのふたりも、澪を知っているんです」
と、オレは正直に話した。