「……あそこの家のご主人、いなくなったんですって」
「え? 今月に入って何人目?」
「失踪者がこんなにもいるって、不自然よね……」
バス停のそばのゴミ捨て場では、村のおばさん達が井戸端会議の真っ最中。
オレ、高浜 滉は村のバス停でひとり、ぼんやり立っていた。
制服の半袖シャツが、生ぬるい風に揺れる。
(朝からそんな話、聞きたくないし)
夏の終わりとはいえ、朝から暑い。
本当に秋が来るのかと、毎年ながら疑ってしまう。
慣れてはいるけれど、羽音をさせて飛んでくる虫にもイライラする。
「うちの旦那が変なことを言うのよ。山姥の仕業じゃないかって」
「しっ!滅多なことを言うもんじゃないわよ」
(山姥……)
あの昔話に出てくる、おばあさんの妖怪みたいなやつ?
(マジで言ってんの?)