練習が本格化していき、ボールが飛び交うようになってくる。
黒瀬さんが言ってた流れ球って一体なんのことなんだろう。
そんな事を考えながら転がってくるボールを拾おうとする。
「──マネージャー!危ない!!」
「え?」
顔を上げた時、ものすごい勢いで向かってくるボールが見えた。
やばい、ぶつかる──
目をつぶり、顔の前に手を出して衝撃に耐える。
ベシン──と音が聞こえてきたけど、私の体には痛みどころか感触すら伝わってこない。
目を開くと、目の前に映ったのは黒瀬さんの腕だった。
どうやら、私の近くに来てボールを弾いてくれたみたい。
「だーから言ったでしょ、流れ球に気をつけてって」
私の正面にきてボールを拾う黒瀬さんは私のことを見つめながら口を開く。
「す、すみません。ありがとうございます」
「ハイ、どーいたしまして」
お礼を言うと、ワシワシと頭を撫でて練習へと戻っていく黒瀬さん。
な、なんで頭撫でるの・・・?
そんなことを思いながら撫でられた頭を触り、部活に参加した黒瀬さんを見る。
頬を伝う汗を裾で拭いながら、練習に打ち込む姿に目を奪われた。
1年の灰田くんも上手いけど、黒瀬さんは熟練感があるように見える。
灰田くんより2年分多く練習してるから当たり前なのかもしれないけど。