ボトルを全て作り終え、両手でカゴを持って体育館の中に入る。
空だったボトルの中身が全部入っているからか結構重たい。
だけど、弱音なんて吐いてられない。
「ボトル、作ってきました」
「おっ、サンキュー。そこに置いといてくれ」
どこに置けばいいかも分からない私は、大声でランニング中の皆に向かって声をかける。
すると、ランニングをしていた黒瀬さんが少し離れたところにある皆の荷物が置いてある隣を指差してくれた。
「分かりました」
カゴを持って黒瀬さんが指差した場所へとカゴを持っていく。
よいしょ、と指定された場所にカゴを置く。
重かった・・・さすがに人数分作るのはしんどいな。
これを毎回か・・・予期せぬ形で筋トレになりそう。
呆れ気味にカゴを見ながら、ランニング中のみんなを──というか灰田くんを見る。
息も絶え絶えで苦しそうな表情を浮かべている。
だけど少し赤くなった頬に伝う汗がとても色っぽく見える。
どんな表情もカッコイイんだよな・・・惚れてるからフィルターかかってるのかな?
「・・・なーにニヤニヤしてるんですかぁ?」
「な!?」
ランニングが終わったのか、息を荒くしながら私の隣に来た黒瀬さんが声をかけてくる。
いつの間にランニング終わったの!?
急に来た黒瀬さんに驚きながら口元を隠す。
「・・・どうせ、息の上がった陸のこと見てニヤニヤしてたんだろ?変態」
「そっ、そんなんじゃないです・・・!」
耳元でささやくように呟いた黒瀬さんにムキになって返す。
確かに灰田くんのことは見ていたけどニヤニヤはしてないはずだ。
なんなら、今の黒瀬さんの方がニヤニヤしてるし。
「へぇ〜・・・にしてはずいぶん熱い視線を送ってたんじゃないですか〜?」
「う、うるさいです、私と喋ってないで練習に戻ってくださいよ!」
隣で体を傾けるようにして私に近付いていた黒瀬さんの体を押し退ける。
思ってる以上に距離が近くていたたまれなくなる。
距離感バグってるのかな、この人。
「照れなくてもいいのに〜」
「照れてません!」
背中を押して練習に戻そうとするけど、後ろを向いてニヤニヤしている黒瀬さん。
私なんかに構ってないで真面目に練習して欲しい。
「見惚れるのは構わないけど、流れ球に気をつけろよ」
そう言って、練習へと戻る黒瀬さん。
・・・流れ球?