更衣室の中に入り、手にしたジャージに着替える。
まさか予備のジャージが黒瀬さんのものだとは思ってなかったから、サイズが合うかすごく心配になる。
制服を脱ぎ、渡されたジャージを身にまとう。
上も下もすごくダボダボだった。
ズボンの紐を限界まで締めているから、かろうじて下がってはこないけど、足元の裾が余ってしまって歩く度に引きずってしまう。
上着はギリギリ指先が見える程度。
黒瀬さん、小さめって言ってたけど全然小さくないんですけど。
まぁ、私と黒瀬さんは体格差があるし当たり前っちゃ当たり前なんだけど・・・。
そう考えながら、ズボンの余った裾をまくって歩く度に引きずらないようにした。
服に着られてるってこういう事を言うんだろうな。
そんなことを思いながら、制服を畳んで体育館へと戻る。
「着替えてきました」
「おっ、伊吹ちゃん。ジャージ着れ──」
練習の準備をしていた黒瀬さんは、視線をこちらに向けた途端、ピシッと固まったように動きを止めた。
「・・・やっぱ、伊吹ちゃんにはデカすぎたか」
作業を中断して、私の方へと歩み寄る黒瀬さん。
そして、目の前に立って私の腕を掴んだ。
「手ぇ出しとかないと危ないですよ」
そう言いながらクルクルと服をまくり、手が出るようにしてくれる。
丁寧で優しい手つきで両腕をまくり上げてくれた。
「ありがとうございます」
「──いーえ、こちらこそ」
・・・こちらこそ?
「じゃあ、早速だけどドリンク作ってもらえる?ボトルある分だけ頼むわ」
黒瀬さんの言葉に首を傾げていると、近くに置いてあったボトルとアクエリアスの粉が入ったカゴを差し出してくる。
ボトルある分・・・てことはかなりの量になりそうだ。
「わかりました」
空のボトルが入ったカゴを手に持ち、水道場に向かう。
確か、体育館を出てすぐ脇のところにあったよね。
そう考えながら体育館の外へ歩いてくと私の記憶通り、そこには水道場があった。
ボトルのフタを開け、アクエリアスの粉を中に入れる。
そして、蛇口をひねってボトルの中に水を入れる。
粉が全部解けるようにボトルを軽く振りながらためていく。
ちょうどいいラインまで水を注いだら、キャップを閉めてシャカシャカとボトルを振る。
溶け残りがないように念入りに振ったあと、フタを外して味見をする。
ちょうどいい具合に作れたかな?
そんなことを思いながら次のボトルに手を伸ばした。