「基本的にやることは俺らのサポートね。ドリンク作ったりタイマー使って時間測ったりとかね」
手を繋ぎながら体育館に向かう最中、マネージャーの仕事を説明してくれる高身長男子。
だけど、私にはまだ分からないことがあった。
「あの・・・聞いてもいいですか?」
「ん?良いよ。分からないことでもあった?」
「あなたの名前、教えてください」
私はいまだに高身長男子の名前を知らない。
この人は私の名前を知っているのに、だ。
まぁ、多分学生証を見たから名前を知ってるのかもしれないけど。
「言ってなかったっけ?俺、3年の黒瀬 聡。覚えておいてくださいね、伊吹ちゃん」
後ろを振り返り、私のことを見つめながら名乗る高身長男子改め黒瀬さん。
まさかとは思ってたけど、この人先輩だったんだ。
「気軽に“聡先輩♡”って呼んでくれていいよ〜?」
「呼びません」
今、明らかに語尾にハートついてたよね?
可愛くない私がそんな可愛いこと出来るわけないじゃん。
そんなことを考えていると、ようやく体育館に着いたようだ。
「ほら、体育館着いたよ。中入ろ」
「えっ、待って!このまま行くの!?」
手を繋いだ状態で中に入ろうとする黒瀬さんに止まるように声をかける。
「このまま行くに決まってんだろ?」
何かを企んでそうな笑みを浮かべながら私の手を引き中に入っていく黒瀬さん。
彼が入っていくってことは、手を繋いでる私も一緒に中に入らざるを得なくて・・・。
「お待たせ〜、連れてきたぞー」
体育館の中に入る黒瀬さんは準備をしているメンバーに声をかける。
その途端、メンバーがめの色を変えてこちらに向かってきた。
「君がマネージャーになってくれる人!?」
「俺達もついに美人マネージャー獲得だ!!」
ワイワイとその場で盛り上がる部員たち。
そんな中、私だけ取り残されていた。
な、なんでこんなにテンション高いの・・・?
「あれ、伊吹さんじゃないっスか。マネージャーって伊吹さんのことだったんスね」
私を囲ってる人達の隙間から灰田くんが声をかけてくる。
会いたいと思ってた分、声をかけられたことが嬉しくてたまらなかった。
「黒瀬さんと手ェ繋いで来るなんて、仲良いんですね」
「っ──・・・!!」
灰田くんの言葉で手を繋いでいた事実を思い出し、振り払おうとする。
こんなところを見られるなんて、灰田くんに勘違いされちゃう・・・!!
でも、黒瀬さんはさっきよりもキュッと手を握る力を強めた。
「・・・俺が離すまで手ぇ離しちゃダーメ、バラされたいの?」
「っ・・・!?」
耳元に顔を寄せ、低めの声を出してささやく黒瀬さん。
その言葉で、黙らざるを得なかった。