体育館につき、更衣室でジャージに着替える。
着替え終わり次第、準備の手伝いをしようと更衣室から体育館へと戻った時、灰田くんが上半身裸の状態で走ってるのが目に入る。
「はっ、灰田くん!?なにしてんの!?」
思いもよらない行動に驚き、ドキッとするのと同時にキュッとと身を縮めて声をかける。
なるべく灰田くんのことを見ないように目を逸らした。
「Tシャツ忘れちゃったから取りに行ってきまーす!!」
「えっ・・・そのままで!?さすがになにか着てから行きなよ!!」
私の言葉には耳を貸さずにそのまま立ち去っていく灰田くん。
あーいうのは本当にやめて欲しい・・・心臓に悪い。
体勢を戻し、ドキドキとしている胸を押さえて落ち着こうとする。
「あれ?伊吹ちゃんの割にはそんなにうろたえてなかったね」
「!黒瀬さん・・・見てたんですか?」
後ろから声をかけてくる黒瀬さんの方を向く。
腰に両手を立てながら私の方に顔を近付ける黒瀬さん。
「ちょ・・・ちょっと、なんですか・・・!?」
「今──陸の事見てなかったね」
黒瀬さんは耳元で低めの声で囁く。
確かに、今は灰田くんのことを見ないようにしていた。
でも、そんなことわざわざ言う必要ある?
「え?そ、そりゃ・・・上半身裸だったし・・・」
「照れて見れなかった?」
「そ、そんなんじゃないです!ていうか、そもそもガン見してたら変な人だと思われるじゃないですか!」
ニヤニヤとしながら私の顔をのぞき込むようにしている黒瀬さんにムキになって言い返す。
ふぅん、と興味無さそうに呟く黒瀬さんは思い出したかのような反応をした。
「そうだ。先に言っておくけど、大会とかは更衣室とか用意されてないし、その場で着替えることが多いから上半身裸になることあるから。覚悟しといて」
「え!?・・・わ、分かりました」
黒瀬さんの言葉に驚きながらも頷く。
兄や弟がいれば慣れることもあるんだろうけど、あいにく私には兄弟はいない。
年頃の男子の裸体なんて見慣れてないからどうしたって妙な反応をしてしまう。
「俺のだったらいくらでも見てくれていいんだよ?」
そう言って、自分の服をめくってお腹を見せてくる黒瀬さん。
予想外の行動にギョッと目を見開き、ビクッと身体を震わせた。
「見ません!早くお腹しまってください!」
「はいはい」
黒瀬さんから目を逸らし、私が背を向けている最中に彼はたくしあげた服を戻す。
びっくりした・・・。