教室に着くと、親友のつぐみが私の席に座って待ち構えていた。
「来た!!ねぇ!!伊吹!なに今日も3年生の先輩と仲良く登校してんのよ!!」
ガタッと立ち上がり、私の方にズカズカと近寄ってきながら質問攻めさせる。
「あー・・・えっと・・・」
どう言えば納得してもらえるのかを考えながら両手を体の前に出す。
これ、部活の帰りも送って貰ってるって知ったらどうなるんだろう。
「黒瀬さんが勝手に迎え来てるだけだよ」
「好きな人いるのに別の人に送って貰ってるのどーなのよ!!その人、伊吹が灰田くんのこと好きなの知ってる訳!?」
「・・・えーと・・・」
これは言っていいことなんだろうか、と思って口篭る。
黒瀬さんは私が灰田くんのことが好きなことは知ってる。
知ってるはずなのに送り迎えをしてくれている状態だ。
「まさか、その3年生伊吹の気持ち察しててわざとやってるとかないよね!?」
「・・・さぁ?どうだろう」
アハハ、と苦笑しながら曖昧に返す。
有り得る・・・黒瀬さんなら十分に有り得る。
実際私が灰田くんのこと好きなこと知ってるのに、思わせぶりな行動や言動してくるし・・・。
「それか、伊吹に気があるとか」
「・・・それはない、と・・・思う・・・」
しどろもどろになりながらもつぐみの問いに答える。
好きとか可愛いとかサラッと言うけど、冗談ってすぐはぐらかすし。
まぁ、そう言う割には言葉に熱がこもってたりするけど・・・。
「伊吹にしては歯切れ悪いわね。いつもなら“それは無いから”ってズバッと言い切るのに」
「冗談って言いつつ色々言われてるから・・・わかんないんだよなぁ・・・」
「はぁ!?色々って!?」
ため息をつきながら思わず本音を呟くとつぐみがガシッと肩を掴んで揺さぶってくる。
聞こえちゃったか〜・・・これは言わない方がいいかなって思ってたのに・・・。
「私が可愛い・・・とか、好き・・・とか?」
「もうそれ好きじゃん!!好きでも無い人にそんな事言わないって!!」
「いやまぁそうだけど・・・」
肩を揺さぶりながら力説してくるつぐみに、困りながらも言葉を紡ぐ。
だけど、あの人はそういうのじゃない気がする。
ただ、冗談言って私の反応を見てるだけな気もするし。
「伊吹って何気にモテるからな〜」
「いや、それはないでしょ。私可愛くないし」
身長も高いし、目つきも悪いし・・・可愛い要素なんてどこにもないし。
「何言ってんの!?伊吹は美人系なのよ!!自覚無し!?こんなに美人なのに卑屈なのどうにかしなさい!!」
「えぇ〜・・・?」
グイグイとくるつぐみに黙らざるを得なくなる。
美人系・・・か。
ただ目付きが悪いからそう見えるだけな気がするんだけど・・・。