翌日──



ピロン♪



学校へ行く準備をしている最中、スマホから通知音が鳴る。



確認すると、黒瀬さんからのLINEだったようだ。



“おはよう、今日も可愛いね”



反応に困るLINEに“おはようございます”とだけ返すとすぐに既読がついた。



見るの早いな・・・。



そんなことを考えていると、再びLINEの通知が来る。



“つれない反応しちゃう所も好きだよ”



またこうやって勘違いしそうなことを・・・。



そんなことを考えながら、スマホを一旦置いて準備を終わらる。



そして、荷物を持って玄関を開けた。




「お、来た来た・・・伊吹ちゃん、おはよー」



玄関を開けると、目の前には黒瀬さんが立っていた。



昨日も待ってたのに今日も待ってたんだ・・・。



「お、おはようございます・・・いつから待ってたんですか?」



「んー、ナイショ♡」



「待たせるの忍びないんで連絡してください。どうでもいいことは送ってくるんですから」



恐らく何時から待っていたかは言うつもりはないんだろう、そう考えた私はLINEで伝えて欲しいと告げた。



どうせ、それもはぐらかすんだろうけど・・・。



「・・・俺がLINE送り始めた頃にはここにいるよ」



「つまり、私が準備始める時にはもう待ってるんですか?」



「そういうことになるね」



そうなると、黒瀬さんを結構待たせてしまっていることになる。



もし明日も待ってるようならちょっと早めに出ようかな。



「それにしても・・・どうでもいいLINEって言い方は悲しいなぁ。俺、大事なこと送ってるはずなんだけど?」



「・・・冗談を言うのが大事なこと?」



スマホを出してトーク画面を見た後に黒瀬さんを見つめる。



どう考えても冗談じみた会話だと思うけど?



「・・・全部が全部冗談言ってるって訳では無いんだけどなぁ・・・」



ギリギリ聞こえるか聞こえないぐらいの小声で呟きながら、私から視線を逸らす黒瀬さん。



全部が全部冗談じゃない・・・?



それって──



「一部は冗談じゃない・・・ってことですか?」



「・・・ま、そういうことになるかな。例えば──伊吹ちゃんのこと、可愛いなーって思ってるところとかね」



「!!」



頭をかいたあと、私の顔をのぞき込むようにしながら余裕の笑みを浮かべる黒瀬さん。



その言葉にカァッと頬が熱くなっていくのがわかった。



か、可愛いって・・・!?



「予想外の言葉を聞いたりするとすーぐ赤くなっちゃう所──可愛い」



頬に手を添えて撫でながら低めの声で甘い言葉を吐く黒瀬さん。



どう反応していいのか分からず、ただ黒瀬さんのことを見つめることしか出来なかった。



「・・・あ、あの・・・」



「頬すべすべ・・・髪の毛といい頬といい触り心地良いね。何かやってる?」



「えっ・・・いや、化粧水とか乳液とかはつけてますけど・・・」



急に話題が変わり、話の速さについていけないながらも必死に答える。



別にエステとか行ってる訳でもないし、母親なら言われて少しだけやってる程度だから、本格的にやってる訳じゃない。



「ふぅん・・・でもほっぺもちもちだよね、ほら、こんなに伸びる」



「ちょっほ、やめへくははい!」



私の頬をつねって引っ張り始める黒瀬さん。



やめてくださいと言おうとするけど、空気が抜けて上手く発音できない。



「アッハハハ、何言ってるのかわかんなーい」



そんなことを言っていると学校にたどり着く。



バイバーイと手を振る黒瀬さんにお辞儀をしたあと教室へと向かう。



・・・全部が冗談じゃない・・・か。