ボトルを作り終わり、体育館の中に入るとちょうど休憩を取るところだった。
考え事しながらだったから少し遅くなっちゃったかな?
「ボトル出来ました」
「待ってましたァ!!ボトルください!!」
「俺も俺も!」
「あ・・・はい、どうぞ」
中に入った私の周囲に、集まってくる部員達に少し慌てながらボトルを渡す。
まさかこんなに集まってくるとは思ってなかったから動揺してしまう。
「伊吹さん!俺にもください!」
部員達にボトルを渡していると、灰田くんも私の元に近寄ってくる。
「う、うん・・・!はい」
急に声をかけられたせいで声が上ずるけど、何とか誤魔化しながら灰田くんにボトルを渡す。
差し出したボトルを灰田くんが受け取る時、指先が少しだけ触れてしまう。
「!」
「アザッス」
灰田くんは私に触れたことなど気にする様子もなく、ボトルを受け取って飲み始める。
気にしてるの、私だけ・・・か。
意識されてないんだな、なんて考えちゃって少し落ち込んでしまう。
元々この気持ちを伝えるつもりはないし、なんの進展もいらないとは思ってるけど・・・。
やっぱり、高望みしちゃってるんだろうな。
「──伊吹ちゃーん、俺にもボトルくださーい」
「!?」
考え事をしている時、後ろから優しく包まれるように抱きしめられる。
後ろを振り返ると、黒瀬さんが私の肩に顎を乗せながらくっついてきてるのがわかった。
「くっ、黒瀬さん!?」
黒瀬さんが抱きしめているということを知り、ドキドキとし始めるのと同時に、頬が熱を持っていく。
思わず彼の名前を呼ぶと、ピクっと反応してキュッと抱きしめる腕に力を込めた。
「さっきから陸の事見すぎ。俺のことも見てよ」
「!」
耳元で呟かれた黒瀬さんの低めの熱のこもった声と発せられた言葉に、ドキッと胸が高鳴る。
確かに灰田くんのこと見てたけど、なんで黒瀬さんが俺の事見てって言うの?
もしかして、黒瀬さんって私の事──
「あ、あの・・・黒瀬さん・・・」
「・・・なんてね、冗談だよ。それより、ボトルちょうだい?」
少し間を開けてから私から離れ、手を差し出す黒瀬さん。
い、今の──なんだったんだ?
「は、はい・・・どうぞ・・・」
ドキドキと高鳴る心臓がバレないか心配になりながらも、平常心を保って黒瀬さんにボトルを渡す。
「サンキュー」
ボトルを受け取り、そのまま飲み出す黒瀬さん。
私はドキドキしながらその姿を見つめた。