体育館の外にある水道場でボトルを作りながら、さっきの黒瀬さんの表情を思い出す。



“──ふざけてなんかないよ”



私の頬に手を添えながら言った黒瀬さんの言葉が頭から離れない。



さっき黒瀬さんが触れた方の頬に手を当てながら、水を溜める。



てっきり、私の事をからかって遊んでるだけかと思ってたけど・・・。



ふざけてない・・・か。



キュッと音を立てながら水道を止めて、フタをして粉を混ぜる。



おふざけじゃないなら、アレは私に近付きたいと思っていたってこと?



なんで?



近付きたいって思うほど私の事好き・・・とか?



いやいや、ありえない。



身長も高くて目つきも悪い、なんの可愛げのない私なんかを好きになる人なんていないし。



仮に好きだったとしても恋愛感情とかではなく、後輩として好きとかだろう。



でも、好かれるようなこと何もしてないんだけどな。



マネージャーになって、部活の手伝いをして一緒に帰ったぐらいだし。



「・・・謎だ・・・」



作り終わったボトルをカゴに戻しながら呟く。



本当に黒瀬さんという人は分からない。



会ってそんなに時間経ってないのに距離感近いし、よく知りもしない人をマネージャーにさせるし。



嫉妬心むき出しにした女の子を撃退した時にはいきなり彼女だとか言い出すし・・・。



あの時は咄嗟の嘘とか言ってたけど、本当にそうなってもいいんだけど、みたいなこと言うし。



そんなことしてたら、本当に好きな子に振り向いて貰えなくなるのに。



そう思った時、ふとした疑問が湧き上がってくる。



・・・黒瀬さんは好きな人とかいるのだろうか。



他の子にあんな思わせぶりな態度取ってたら、好きな人に振り向いて貰えなくなっちゃうんじゃないのかな?



私の事好きじゃないのかな、みたいな。



好きな人がいるならその子だけに優しくするとか、わかりやすいアプローチしないと気付いてもらえなさそうだし。



なんて、そんなこと考えたところで黒瀬さんに好きな人がいるなんてわからないし、考え損だよね。



そんなことを考えながら、ボトルを作ることに専念した。