黒瀬さんと手を繋ぎながらしばらく歩くと、学校に到着する。
学校についてもなお、どうして黒瀬さんが手を繋いできたのか分からずじまいだった。
2人と別れ、教室へと向かっている時いつも一緒にいる親友、小日向つぐみがグイグイと私の目の前に近寄ってくる。
「ねぇ、伊吹!!今日3年生の先輩と手ぇ繋いで来てたよね!?しかも隣に灰田くんいたじゃない!!どーいう組み合わせよ!!」
「あー・・・」
短いショートヘアをなびかせながら、グイグイと来るつぐみにどう説明すればいいのか分からずに、頭をかく。
つぐみ、灰田くんと幼なじみだからチラッと見えただけでバレるよね・・・。
「黒瀬さんが家が近くだからって迎えに来てくれて・・・一緒に歩いてたら灰田くんと合流したって感じ・・・かな」
「それで3年生と手を繋ぐってどういうことよ!?好きな人の前でしょ!?」
「それは私が聞きたい・・・」
私だってなんで黒瀬さんが手を繋いできたのかいまだにわからないし。
それに──
“陸ばっかじゃなくて、俺にも構って”
耳打ちされた言葉も、よくわかんなかったし・・・。
言葉のままなら構って欲しかったってことになるけど、その理由は?
気まぐれ・・・とか?
黒瀬さんならありえそうだからなんとも言えないな。
「それに、昨日灰田くんと同じ部活にマネージャーとして入ったんでしょ?」
「う、うん・・・ちょっと色々あってね・・・」
言葉を濁しながらつぐみに話す。
黒瀬さんに脅されて入った、とは言わない方がいいだろう。
そんなこと言ったらつぐみが発狂しちゃう。
“私の友達になんてことさらしてんじゃこらぁ!!”的なことを言いながら突撃しかねない。
「ふぅん・・・でも、同じ部活なら近くで見れるじゃん!良かったね!」
「まぁ・・・うん。ちょっと他の女の子が怖いけどね」
マネージャー初日に“先輩に近付かないでよ”って感じの事言われたし・・・。
いつまた言われるかわかったもんじゃない。
「女の嫉妬って怖いからね〜・・・気をつけなきゃダメよ?それじゃなくても、灰田くん昔からモテるから」
「あはは・・・気をつけまーす」
それがもう経験してるんだな〜・・・これが。
そんなこと言えずに、困りながら笑う。
キーンコーンカーンコーン
そうこう話していると、チャイムが鳴る。
「あっ、やば!席つかなきゃ!またね!」
「うん、また」
つぐみと離れ、自分の席へと向かった。