翌日──



学校へ行く準備をしている最中、スマホに通知がくる。



準備を済ませたあと、スマホを確認するとそこには黒瀬さんからのLINEが来ていた。



そこには、“ジャージ持ってきて”とメッセージが来ていた。



ジャージ・・・部活で使うからかな?



そう考えながら、“分かりました”と返信してからジャージを荷物の中にいれて外に出る。



家の外に出ると、目の前に黒瀬さんの姿があった。



「黒瀬さん!?」



「おはよ、伊吹ちゃん」



「お、おはようございます・・・」



黒瀬さんがいることに驚きながらも、返事をする。



なんで黒瀬さんがここに・・・?



「あの・・・待ってたんですか?」



「まぁね。せっかくだから一緒に行こうかなって思って」



黒瀬さんに声をかけながら彼の近くへ歩いていく。



私が隣に並び立つのと同時に黒瀬さんが歩き出す。



「連絡してくれれば待たせなかったのに・・・」



申し訳なく思いながら黒瀬さんを見上げる。



そもそも何時から待ってたんだろう。



「連絡せずに待ってた時の驚き顔が見たくてさ。可愛かったよ?」



「・・・黒瀬さん、悪趣味ですね」



可愛いって・・・私なんか可愛くないだろうに。



そんなことを思いながら、前を見る。



「伊吹ちゃんの色んな表情が見たいのよ、俺は」



「?なんで──」



「あれ、黒瀬さんに──伊吹さん?」



“なんでですか?”そう聞こうとした時、十字路に差しかかり、横の道から灰田くんが姿を現した。



思いもよらない出会いに、ヒュッと息が詰まる感じがした。



「陸、早いな。おはよう」



「おはようございます。今日日直で早めに行かなきゃ行けないんで。伊吹さんもおはようございます」



「お、おはよう」



私の右隣に並んで歩く灰田くんにドギマギしながら答える。



まさか一緒になるとは思ってなかったから、心の準備が・・・!



「2人で登校してたんすか?」



「う、うん。家が近くで一緒になったんだ。ねっ、黒瀬さん!」



「・・・あぁ・・・」



緊張のあまり左隣にいる黒瀬さんに話を振る。



だけど黒瀬さんは相槌だけで話してはくれなかった。



「へぇ〜、家、近所なんですね。俺電車使うから羨ましいです」



「灰田くん電車通学なの?」



「はい、俺遠いところに住んでるんで」



「へぇ、そうな──」



灰田くんと話している最中に黒瀬さんに左手を握られる。



何事かと思って黒瀬さんの方を見るけど、目を逸らしていて視線は合わない。



どうしたんだろう。



「黒瀬さん・・・?」



「・・・・・・」



名前を呼ぶと、無言のまま少しだけキュッと手を握りしめる。



急なことに驚いていると、チラッとこちらを見る黒瀬さん。



そして、私の耳元に顔を近付けて来る。



「陸ばっかじゃなくて、俺にも構って」



低くささやく黒瀬さんの言葉に、目を丸くする。



確かに灰田くんと合流してからずっと灰田くんとばかり話してたけど──



でも、なんで・・・?



「?どーしたんすか?」



「いーや、なんでもない」



灰田くんの問いにおどけたように声を上げる黒瀬さん。



そんな黒瀬さんの態度に、私の頭の中はハテナで埋め尽くされていた。