練習が終わり、着替えをすませて荷物を持つ。
黒瀬さんに借りたジャージを洗って返そうとしたけど、“どうせ使わねぇから”と洗わずに奪い取られてしまった。
動いたし、汗とかかいてたら嫌だから洗って返したかったんだけどな。
そんなことを考えながら体育館の外に出る。
すると、私の目の前に女の子が3人現れた。
「ねぇ、アンタ。昨日までギャラリーで見てたわよね?なんで今日部活に参加してたのよ」
「なんでって──」
この雰囲気はヤバいやつかもしれない。
危機感をいだきながら女の子に対して口を開こうとするけど、緊張してるせいか上手く言葉を紡げない。
「黒瀬先輩に近付くのやめてくれる?マネージャーになったのも、黒瀬先輩目当てでしょ?」
「え──」
私は別に近付いてなんかない。
むしろ向こうから近付いてきてるし、なんならマネージャーになるように言ったの黒瀬さんなんだけど・・・。
そんなことを言えるはずもなく、黙って聞くしかできなかった。
「なんでアンタみたいな巨人女が黒瀬先輩の隣にいるわけ?ほんと意味わかんない」
ズキ──
何を言われてもピンと来なかったのに、身長のことに触れられるとさすがに傷付く。
だけど、何も言い返すことも出来ずにうつむくことしか出来なかった。
「あららー、なーにしてんの?」
後ろから私の肩を抱きながら話に割って入る人がいた。
振り返るとそこには黒瀬さんの姿があった。
「く、黒瀬先輩・・・!?」
「巨人女がどうのこうのって聞こえたけど──俺、このくらい身長高い子の方が好みなんで、俺に相手にして欲しかったら身長伸ばしてから出直してくださーい」
グイッと私の頬に自分の頬を押し付けるようにして近付く黒瀬さん。
“それに、俺身長高いからこの人ぐらいの身長が好きなんだよね”
灰田くんと同じようなことを言う黒瀬さんに少し驚く。
しかも、体勢もあの時と同じ感じだし・・・。
「身長はってだけですよね、私達だって──」
「それに、この子俺の彼女なんで。他の子にキョーミないんですわ」
「は──?」
一瞬、黒瀬さんの言った言葉を理解できなかった。
私が──彼女?
えっ、どういうこと・・・!?
「っ──見せつけてんじゃないわよ!」
黒瀬さんの放った言葉に戸惑っていると、女の子達はそそくさと退散していく。
良かった・・・どこかに行ってくれた。