「ほら」
「あり、がとう」


 言葉を詰まらせながら立ち上がる。

 二日前、私は加賀美くんに告白の返事をした。
 気持ちには答えられない、と。

 返事が速すぎると言われたけれど、どんなに考えてもこの答えは変わらない。きっと高科さんの存在がなくたって、彼はずっとかけがえのない大事な友達でしかなかった。

 普通に、普通に。

 そう意識するあまり、いつもどう接していたのか急に分からなくなる。あれからまともに目も合わせていなかったから、態度がとても余所余所しくなった。

 すると、額に弾けるような刺激が走った。


「痛っ……」
「露骨に気まずいって顔すんなよ」


 そう言って笑う加賀美くんの顔がそこにあった。


「デコピン痛いんだけど」
「久しぶりにしたわ」


 そうだ、こんな空気だった。

 額をさすりながら、自然と笑みがこぼれる。いつの間にか以前のように話せている自分がいて、彼の気遣いが痛いほど伝わってきた。


「これからも同期だからな」


 突然改まったように言われ、固まる。


 当たり前のことを今更、と思いながら、その言葉の意図が探していたら、

「同期会。勝手に省くなよ」

 仏頂面でそう言った。