「明日は仕事?」
日曜の夜。仕事から帰ってきた彼と夕食を囲む私は、サラダを食べながら頷いた。急に現実へと引き戻される。
さすがに体調がよくなったら、もうこの家にいられない。恋人でもない私が、いつまでもいてはいけないとブレーキを踏んだ。
本当なら今日だってこのまま泊まっていいのか分からない。
でも、あえてそれは聞かなかった。
もう少しそばにいたいという私のわがまま。
彼と一緒に過ごす時間がどうしても欲しかったから。
「残念だな」
そのとき、寂しそうな顔で彼が言った。
「朝倉さんが待ってるって思って、仕事頑張れたのに」
はにかむ彼の笑った顔に、私は好きだと言いたくなった。
言葉のひとつひとつが心を刺激してくる。包み隠さず素直な気持ちを伝えてくれる彼は、欲しい言葉をくれる人。
そこは、昔から変わらなかった。
「これ、返しますね。忘れないうちに」
私は動揺をごまかすようにしてポケットから合鍵を取り出した。
なにかあった時にと渡されていた鍵。名残惜しく思いながら、テーブルの上を滑らせて彼の元へと届けた。
しかし、彼は受け取ろうとしなかった。