「美味しそう」
「久しぶりに料理した。口に合うといいんだけど」
こんな風にすんなりと作れてしまう彼はどこまでかっこいいのだろうか。
いつもと違いちょっと隙があるようなオフモードの姿が、余計にドキドキさせた。
「いただきます」
湯気がたつスプーンに息を吹きかけ、一口。
一瞬熱さにやられそうになったけれど、口に入れた瞬間広がった安心するあたたかい味わいに心が癒された。
「美味しい」
ホッとこぼれ落ちた言葉。こんなにも心あたたまるご飯は久しぶりだ。
よかった、と胸をなでおろす彼を前に、こんなに幸せな休日があっていいのだろうかと夢気分だった。
それからすぐ、仕事へ出かけて行った高科さんを玄関で見送った。
いってきます。いってらっしゃい。
そんな会話を交わす私たちはまるで恋人みたいだと図々しい妄想を広げた。
ひとりになってスマホを見るや否や、菜乃花から何通かメッセージが届いているのに気づいた。いつも夜遅くなる日は連絡を入れるようにしていたから、昨日なにも言わずに外泊したのを心配してくれていた。
私はあえてなにも触れず、帰るときに連絡する、とだけ伝えた。
すると、察しのいい彼女は意味深に、ニタニタした顔のスタンプだけを送りつけてきた。