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「朝倉ちゃん、今日雰囲気違うね」
定例ミーティング終え、そそくさと帰り支度をしていたら向坂店長がにやにやと嬉しそうに言った。
「変……ですかね」
「ううん、すごくいいと思うよ。デート?」
私は笑って胡麻化しながら、髪を整える。
あれから一週間が経ち、今日は高科さんとの初めてのディナーデートだ。
久しぶりに清楚めなロングワンピースなんか着てしまい、自分でもちょっと気合いを入れすぎただろうかとこそばゆくなる。朝から慣れないヘアアレンジなんかして、危うく遅刻するところだった。
かわいいと、思ってくれたらいいな。
鏡に映る自分を見ながら、よしっと気合いを入れ直した。
「おまたせ」
ボブズから成田空港へと向かった私は、空港のロビーで彼を待った。
しばらく椅子に座って待っていたところへ、高科さんが颯爽と現れる。ダークグレーのセットアップ姿で、今日も一段とかっこいい。思わず、見惚れてしまった。
「あ、ごめん。ちょっとだけ待って」
しかし、現れるなりスマホに着信が入ったようで、壁際に向かっていき誰かと電話を始めた。
立ち上がってしまった私は、一瞬迷いながらもう一度椅子に座り直す。
仕事の話だろうかと想像しながら、これから行くお店のホームページをスマホで検索した。ずっと気になっていて行きたかった美味しいパエリアのお店。行ってみたいところがあると言ったら、彼がすぐに予約をしてくれた。
楽しみで浮かれている。
顔のニヤつきが抑えられず、まだかな、なんて顔を上げた。
そのとき、どこからか「あ」と低い声がした。
驚いて、思わず立ち上がった私の前には制服姿の莉央さんが立っていた。